今回はトレーニング前編として、有酸素能力発達のための走り込み期のポイントと注意点について解説していきます。
有酸素トレーニングの全体における位置付けと目的
概要編でお伝えしたトレーニング全体の中で、最初に取り組むべきもの、かつ、最も長い期間を要するのが有酸素能力を発達させるトレーニングです。
まずは、概要編で全体像の確認と用語の確認をして頂いた方が理解がより深まります!
リディアード式トレーニングの中においても、大きな部分を占めるのが有酸素能力の向上を目的とした走りこみ期です。早速、目的を確認します。
走り込みと聞くとかなりの距離を稼ぐ必要があるのでは?とイメージしてしまいますが、それはあなたの現在の能力と何を目指すのかによって変わります。
1つ言えることは、この練習の目的を達成できれば良いのであって、何キロ走ればOKというものではありません。これは最初のコンセプトの中の「バランス」に繋がるものです。
詳しく知りたい方は本書を手にとってみてください。
有酸素トレーニングの内容とそのポイント
続いて、トレーニング内容についてみてみましょう!
いたってシンプルですね。
先の目的にあげた通り、ここではじっくりと有酸素能力を高めることが大切です。この観点から、練習に取り組む上でのポイントが3つあります。
これらにはそれぞれ科学的な根拠があります。
ゆっくり話せるペースで
これは、適切な心拍数ゾーンにコントロールするための最も良い指標として取り上げられるものです。
概要編でも取り上げた通り、有酸素運動を効率的に行うにはLTペース以下で実施する必要があります。加えてある程度の長いランニングを継続するのであれば、強度をコントロールする必要があるのです。
目標の心拍数は、最大心拍数のおおよそ60-70%とされています。最大心拍数がわからない方は目安となる式から算出できますが、最大心拍数にも個人差があります。これで出した数字が本当にあなたに最適化されているのかは、よく考える必要があります。
最近は、心拍計がついたランニングウォッチも多いのでそれを利用することもできます。ただし、心拍ゾーンは上記の式と類似のものから算出されています。こちらを利用する場合も鵜呑みにしないようにしましょう。
繰り返しになりますが、このペースを守ることが最大限の効果を得ることにつながります。調子がいいからと速すぎるペースで走ることは、この目的に対しては効果を損なうことを理解しておきましょう。
ちなみに、最大心拍数は実測値が理想的です。
いくつか方法はありますが、400-800m疾走を数分間隔で5本程度繰り返した時に得られる最大の心拍数を取ることなどで実測が可能です。
できるだけ長い時間を継続
長時間のゆっくりなランニングにおいて、最大の効果が得られるのは最後の20分間だと言われています。毛細血管の発達やミトコンドリア機能への影響は、継続時間と関係しているためです。
「20分間」に特に大きな意味はありませんが、とにかく後半での効果が大きいということです!
例えば、今日は1日30km走ろうという時に、朝10km + 夜20kmよりもどちらかの時間帯で30km走る方が高い効果が得られます。
週の中でメリハリを
最後は週の中でメリハリをつけることです。これは、リカバリー時間をしっかり確保することを意味しています。
長時間のランニングをする代わりに、それ以外の日は休養や短く軽いジョギングなど負荷を調節することでケガなく継続的に取り組むことができます。
トレーニングの懸念点への対応
普段、インターバルトレーニングやレペティションを行ってきた方は次のような懸念を抱くかもしれません。
- スピードが落ちるのではないか?
- 効果が実感しにくくて、モチベ低下に繋がるのでは?
この指摘はもっとであり、リディアード氏もその点は十分に理解していたようです。
スピード低下は一時的なものである
リディアード氏自身もこの期間のトレーニングによって、スピードが低下することは指摘していますが、あくまで一時的であるとしています。
これに対しては、2つの理由をあげています。
- 1時間以上のランは遅筋と速筋の両方を刺激できる
- トレーニングは次のステップへ徐々に移行する
筋肉には持久運動で動員されやすい遅筋と瞬発運動で動員されやすい速筋があるのはご存知かと思います。
ゆっくりなランニングでは速筋は使われないというイメージがありますが、そんなことはありません。
細かなデータは割愛しますが、1976年にピーター・スネル氏らが最大酸素摂取量の60%に相当する運動を継続すると、遅筋のグリコーゲンが枯渇してくると速筋のグリコーゲンが低下し始めることを明らかにしています。
つまり遅筋のエネルギー枯渇が始まる頃には速筋にも刺激が入っていることを示しています。
トレーニング内容についても、リディアード氏は徐々に次のステップに移行していくとしています。
つまり、この5-10週間で最大心拍に近づくような運動を全くするなという内容ではないということです。
トレーニングが次のステップに近づくにつれ、下記のようなトレーニングが徐々に入り込んでくるようになります。
- 週に1回のLTペース走
- 起伏あるコースで速い/ゆっくり、長い/短いを混ぜる
- 週に1回のファルトレク
- 流し(100-200m位を80%くらいの力で)
- ヒル・トレーニングの一部
次のステップに移行する数週間前から取り入れて、次のトレーニングへの下準備をするのが大事だと指摘しています!
効果は日々のトレーニングで確認
ゆっくり走ることメインだと変化は感じにくい部分はありますが、うまくトレーニング効果が出てくると下記のような変化が起きます!
要はLTペースが速くなるので、有酸素ランニングのペースも速くなり、楽に速く走れるようになってくるということです。
この変化を感じるためには、何かしらの指標をモニターすることが必要です。心拍・時間・距離など自分のやりやすい方法で確認することがオススメです。
心拍計がなくても、同じ負荷具合で同じコースを走って「早く家に帰ってこれた!」とかでも十分にその成果を感じられるはずです。
モチベーション維持のためには重要なことだと思います!
少しは不安が解消されたでしょうか?長いランニング人生、まずはやってみるのがいいのかなと個人的には思います!(わたしも2020年7月現在で実践中です。。。)
練習頻度別のトレーニング実施例
参考までに練習頻度別のトレーニング実施例についてご紹介します。
こちらの内容は参考文献である「リディアードのランニング・トレーニング」(ベースボール・マガジン社)に記載されている内容の表記を一部変えたものです。
- 有酸素ロングラン:90-120分以上
- 有酸素ラン:60-90分
- ファルトレク:不整地を20-60分
- LTペース走:30-60分以内
- ジョグ:より遅く30-60分
こちらは既にある程度トレーニングを積んでいる人向けだと思います。また、LTペース走はそこそこキツイので、ここは有酸素ランに変更でもありです。
距離や時間は自分の運動経験や能力によって調整しましょう!
有酸素トレーニングのまとめ
若干、長くなりましたが本書の中でも最もページが割かれており、大切な練習期間です。数字に惑わされることなく目的の達成と基本コンセプトを大事に取り組みましょう!
大会がなかなかされない時期だからこそしっかり取り組めることもあります。
この機会に、あたなも初めてみませんか?
次回はスピード練習に移行するための準備と位置付けられているヒル・トレーニングについてご紹介します!!
それでは、よりランニングライフを!