今回は前編で育ててきた有酸素能力を次のステージへ活かすためのヒル・トレーニングについて解説していきたいと思います。
ヒル・トレーニングの全体における位置付けと目的
長い有酸素トレーニング期間からスピードトレーニングへ移行する準備期間として位置付けられています!
前編をご覧でない方は、興味があれば有酸素トレーニング期の位置付け・目的・実施例も合わせて確認してみてください。
リディアード式では”サナギから蝶への脱皮”と表現されている期間です。それでは早速、目的を確認してみます。
ここでは、あくまで次への下準備として捉えることが大切です。上記の目的を満たすことが最優先なので、スピードを出すこととは分けて考えるようにしましょう。
リディアード氏はこの部分について下記のような言葉を残しています。
ただ漠然と丘を走り上がってっいる者は、これはありがちなことだが、その好影響を失ってしまう。これはレース(=どれだけ速く走れるか競争して一気に駆け上がることの意味)やランニング(=ハッキリした意図を持たずただ普通に走ることの意味)でなくて、非常に重要な訓練である。。。
リディアードのランニング・トレーニング(ベースボールマガジン社)P122より引用
具体例を参考にしたい方は本書を手にとってください。
ヒル・トレーニングの内容とそのポイント
続いて、トレーニング内容についてみてみましょう!
頻度と期間は上に記載した通りです。
坂を利用した自重トレーニングについては少し特殊な部分がありますので、動画をつけておきます。この動画は著者の橋爪氏によってアップされており、解説付きですので是非参考にしてみてください。
スティープ・ヒル・ランニング(バウンス)
イメージは坂道での「もも上げ」です。大腿部を水平まであげること、骨盤が後傾しないように意識しましょう。
このトレーニングで得られる効果は下記の点です。
- 脚の自然な円運動を身につける
- ふくらはぎ・アキレス腱まわりの強化
- 膝上がりの良いフォームの獲得
これは400-800mの坂道をゆっくり踏みしめながら実施しましょう。バウンスで登って、ジョグで下るというサイクルを一定時間で行うようにします。
息切れするやり方はトレーニングの目的に反しますので、脚への負荷を重視することが大切です。
ヒル・バウンディング
坂を「跳ねるように登る」トレーニングです。頭のてっぺんからつま先までが一直線になるようなフォーム・「前へ遠くに」を意識して実施しましょう。
地面を上手く押せる感覚が大事です。腕振りが左右に流れると上手く押せないです。
このトレーニングで得られる効果は下記の点です。
- スピード発揮に必要な筋力・フォームの獲得
これは100-200mくらいの坂道で実施します。非常に負荷が大きいので、個人の感覚でオーバーワークにならないように調節しないと、怪我の要因になります。
ヒル・スプリンギング
足首を使って「上へ上へ」を意識するトレーニングです。ポイントは足首のスナップを効かせることで、フォームの意識は同じです。
このトレーニングで得られる効果は下記の点です。
- パワーを生み出す足首の獲得
これは30-50mの短い坂道を利用します。こちらも負荷が高いので、ご自身の感覚で適切なフォームを維持できる範囲で実施してください。
ダウンヒル・ストライディング
こちらは下り坂で脚を速く回すトレーニングです。ストライドは意識せずに、速いテンポで膝を前へ突き出すことを意識します。下りではスピードを抑えるために後傾になりやすいので、前傾姿勢を取れるように意識が必要です。
このトレーニングで得られる効果は下記の点です。
- 速い動きへの神経系統の対応
- 下りに耐える脚力の強化
こちらはなだらかな坂で実施するのがいいようです。
また、ここでスピードが上がり過ぎるとピーキングに影響が出ることもあり、意図的に抑制するケースもあると記載があります。(具体的な基準は記載されていません)
ポイントは正しい姿勢と速く走ろうとしないこと
ここでのポイントは2つだけです!
トレーニング全体の注意点としては①正しい姿勢で実施すること、②速く走ろうとしないの2点です。
前後左右バランスと適切な筋肉への刺激のために正しい姿勢が重要となります。お手本は動画で確認してもらうのが一番です。
可能なら自分のフォームもスマホ等で撮影し、比較することで効果を最大化できます。
繰り返しになりますが、ここでは速く走ろうとしないことも重要です。
息切れするほど速く走るのは次へのステップまで我慢して、各トレーニングで得られる効果を最大限にするように努めましょう。
ヒル・トレーニング実施例
それでは実施例について紹介します。基本コンセプトである「個々の反応への対応」と「感覚重視」は忘れないでください!
上記で紹介した4つのヒル・トレーニングをどのように組み合わせるかはその人に何が必要かで変わるというのが答えのようです。
また、ターゲットするレースによっても変わってくると記載されています。
少なくとも、陸上経験がない市民ランナーにとってはスティープ・ヒル・ランニングが中心であるということ、徐々に慣らしていくことが必要というのは言えそうです。
トレーニング効果と負荷を考慮すると、上記のような配分が1つの指標になるかもしれません。
コーチがいるわけではないので、ここは実際に自分で取り組んでみて自分の体の疲労度と相談する必要がありそうです。
この数値はわたし個人の考えなので、著者の推奨ではないということはご了承ください。実際に体験してみての感想も別の記事でアップできればと思います!
有酸素トレーニングも含めたメニュー例
ヒル・トレーニング期に入っても有酸素トレーニングをなくすわけではありません。有酸素能力を維持しつつ、スピード順応への下準備を進めていくことになります!
こちらの内容は参考文献である「リディアードのランニング・トレーニング」(ベースボール・マガジン社)に記載されている内容の表記を一部変えたものです。
- 有酸素ロングラン:90-120分以上
- 有酸素ラン:60-90分
- ファルトレク:不整地を20-60分
- LTペース走:30-60分以内
- ヒル・トレーニング:20-45分
ヒル・トレーニングのまとめ
この期間は速く走るわけではないですが、脚力やフォームの向上が狙いでより変化を感じられそうです。一方で、負荷も増えてくるので個人への最適化を考えながら、ケガなく継続できるようにしましょう!
有酸素トレーニング期よりは変化もあってモチベーションが保ちやすそうです。
近くに坂道がない場合は、階段なども代用できるそうなのでご自身で工夫して取り組んでみるのもアリですね。
大事なのはそのトレーニング種目が目的を達しているかです。
とはいえ楽しむことが一番だと思いますので、ピョンピョンして楽しい!くらいの気持ちでもいいのかもしれません笑(筋肉への負荷は高いですが。。。)
次回は、いよいよスピード強化トレーニングについてです。
それでは良いランニングライフを!