最近よく聞く「腸内細菌」というワード。マラソンタイムにも影響を与えるのでは?という内容の論文も出ています。今回はそのうちの1つについてご紹介します!
腸内細菌って何?
まずは腸内細菌がどんなものなのか簡単にみてみましょう!
細菌とは、微生物の中のうちの1つの分類です。
遺伝情報を包む構造を持たないこと、栄養があれば自分で成長できることなどが特徴です。ウイルスは自分だけでは生きていくことができませんので、その点が異なります。
腸内細菌は、文字どおり腸の中に生息する細菌です。たくさんの数や種類が存在し、主に善玉・悪玉・それ以外に分類されます。これらは複雑にバランスを保っていますが、食事・国・ストレスなど様々な要因で変化します。
最近では、がんや糖尿病などの生活習慣病とも関わりがあると言われています。
研究業界では、2010年過ぎから多くの論文が出されるようになってきて、ここ3-4年は色々な分野で腸内細菌の研究が行われています。今回の論文もそのうちの1つです!
*著作権の関係でグラフ等は紹介できないので、イメージ図を使用します。
マラソン前後で変化する腸内細菌が存在する!
それではどんな研究なのか見ていきましょう!参考論文はこちらです。
糞便!!ってなるんですが、腸内細菌研究はこの方法が一般的です。研究者も大変ですよね。。。
まずは、エリートランナーのマラソン前後の変化についてです。
これら両方において、ベイロネラ属という細菌が増加していることが分かりました。また、エリートランナーの方が一般ランナーよりもこのベイロネラ属の細菌が多いようです。
次に、この増加していたベイロネラ属がマラソンのパフォーマンス影響するのかを検証するため、マウスを用いた実験をしました。(*動物愛護に十分配慮した条件で行います)
マウスに、エリートランナーの糞便から精製したベイロネラ属の細菌を摂取させ、運動能力を比較しました。マウスたちには、トレッドミル上で運動してもらい、疲れて走らなくなるまでの時間を測定するという単純な手法です。
すると、ベイロネラ属を摂取したマウスでは、平均で13%も運動の持続時間が長くなりました。
簡単にまとめると、エリートランナーに多くてマラソン後に増えていた腸内細菌をマウスに投与するとたくさん運動するようになったということです!
腸内細菌が乳酸を変換することが要因?
なぜこんな変化が起きるのでしょうか?論文の著者たちは乳酸の分解に着目して研究を進めました!
あなたもご存知のとおり、乳酸は運動すると筋肉中に蓄積されていくため、疲労物質と言われています。(近年は別の捉え方もありますが、ここでは割愛します)
ベイロネラ属の細菌を乳酸がある環境で飼っておくと、乳酸が分解されプロピオン酸という物質がたくさんできることが観察されました。
そしてプロピオン酸だけをマウスに摂取させると、先と同様に運動時間が長くなったのです。
ベイロネラ属によって乳酸がプロピオン酸に分解され、そのプロピオン酸が運動継続に関与している可能性が示されました。ところで、筋肉で発生した乳酸は血中に移動して、腸の中にまで到達するのでしょうか?
この点は、乳酸を追跡できるように目印をつけてマウスに投与する実験で検証しています。その結果、血液の中の乳酸が一定時間後に腸の中でも確認できました。
この結果から、こんな仮説が提唱されています。
これまで、乳酸は筋肉で分解されサイクルが回ると考えられていましたが、ここに腸も関与する可能性があることがわかったのです。
実際はまだわからないことが沢山です。
今回の研究も細かく見るとわからないことが多くあります。この研究からこの細菌をたくさん増やそうとかプロピオン酸を沢山取ろうとは思わない方がよいです。。。
研究内容の細かい指摘はさておき、こういう研究が出ると怪しい健康食品とかが出始めます。騙されないように注意しましょう。
ちなみに、プロピオン酸は焼き菓子、家畜飼料、人工香料などに含まれています。これらが高値であることは、肥満や糖尿病のリスクと言われています。また、遺伝的にプロピオン酸が蓄積しやすい病気も存在します。
要は何事も最適な値があり、状況によってそれも変化するということです。
1つの側面だけを切り取って、無用に強調しすぎているものはだいたい裏があるものです。
今回はややマニアックな内容だったかもしれません(笑)
それでは、良いランニングライフを!