ランニングに必要?バフに飛沫拡散を抑える効果はあるのか?

SCIENCE

今回はランニングをする多くの方が気になるこの問題について、最近の研究を交えて考えてみたいと思います。

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ランニング時のマスク着用論争について

論争の始まりはこちらの記事が急速に拡散したことでした。

Belgian-Dutch Study: Why in times of COVID-19 you should not walk/run/bike close behind each other.
What is a safe distance when running, biking and walking during COVID-19 times? It is further than the typical 1–2 meter as prescribed in…

ランニングをしている方なら、この記事に登場するシュミレーション画像をみたことがあると思います。

この記事を要約すると下記の通りです。

上記の記事の要約
  • 多くの国でソーシャル・ディスタンスと設定される1-2mの距離が、静止している場面以外でも有効なのかを検証する研究を紹介。
  • 走行時に生じるスリップストリームという気流によって唾液粒子が遠くに運ばれるというシュミレート結果だった。
  • 歩行時は4-5m以上、ランニング時は10m以上、自転車では20m以上の距離を取ることが推奨される。

この内容は、瞬く間にSNS上で拡散。

あまりの反響の大きさに、記事に対するQ&A記事まで掲載されました。

Why in times of COVID-19 you should not walk/run/bike close behind each other — Follow Up with Q&A…
By Jurgen Thoelen (Instagram)

こちらのQ&A記事には、

  • 医学的・疫学的な結論を与える内容ではないこと
  • 流体力学の研究であり、ウイルス学研究ではないこと
  • 査読を受ける前に公表した理由

などが記載されています。

いつものことながら、このQ&Aはメディアに取り上げられる事はなく、最初の情報のみが一般認識となってしまいました。

ここで登場したのが、Buffを含むネックゲイターと呼ばれる製品。

不織布マスクの供給不足の中、

  • 洗って繰り返し利用可能
  • 呼吸がマスクほど苦しくない
  • 飛沫拡散も抑えられる?

ということで多くのランナーが手にしたと思います。

https://zett.jp/buff/products/

今回は、このネックゲイター製品について飛沫拡散を抑える効果があるのかについて調べてみました。

Buffの公式サイトの声明:科学的な根拠はない

この製品群の代表であるBuffは公式HPで下記のような声明を出しています。

BUFF® head and neckwear protects against many of nature’s elements. However, while our multifunctional headwear products cover the entire front of the face (nose, mouth, chin, and neck), they are not scientifically proven by the Center for Disease Control (CDC) and the World Health Organization (WHO) to prevent you from: (1) contracting a virus/disease/illness or (2) passing a virus/disease/illness to someone else.

https://buffusa.com/buff-community-statementより引用

翻訳して、まとめると下記のような内容です。

  • Buffは多くの自然要素から保護します
  • 下記はCDCやWHOによって科学的に証明されてはいません
    • ウイルス/疾患/病気にかかることを防ぐ
    • ウイルス/疾患/病気を他人にうつすことを防ぐ

上記の通りメーカー側は、ウイルス拡散防止に対して科学的な根拠が一切ないことを公表しています。

その目的で作ってないし、検証してないから分からない」というのがメーカーのスタンスですね。

1つの研究結果:ネックゲイターに効果はないかも

2020年8月7日にネックゲイターには効果がない可能性を示す1つの論文が発表されました。

注意:医学系の論文ではありません

初めに断っておきますが、この論文はマスクの飛沫拡散を抑える効果を簡便に評価する方法」を提案する論文です。

マスクの性能をこれまでの基準にしたがって性能比較したものではありません。

また、飛沫に含まれるウイルス活性等について検証した訳でもありません。

あくまで、方法論について提案する内容の論文です。

以上をご理解いただいた上で読み進めてください。

検証方法:簡便な評価系で14種のマスクの比較

検証方法を簡単にまとめました!

検証方法
  • 安価なレーザーとレンズで飛沫測定系を構築
  • 14種のタイプのマスクなどを使用
  • 発話の液滴の数を画像解析でカウントして比較
Emma P. Fischer et. al., Science Advances 07 Aug 2020: eabd3083 Fig.2より

下記はデューク大学から出されている公式のYouTube動画です。

実験の様子や著者のコメントを見ることができます。

結果:ネックゲイターでは液滴が減らない

マスクなしと比べ、ネックゲイターでは液滴は減りませんでした。

Emma P. Fischer et. al., Science Advances 07 Aug 2020: eabd3083 Fig.3より

(A)ではマスクなしを1とした時の液滴の相対量を比べた結果です。

医療用のN95や外科用マスクではほとんど液滴がなくなることがわかります。

また、バンダナや布製マスクには一定の効果がみられます。

一方で、ネックゲイター(Fleece)ではやや増加傾向で、液滴を減らす効果はありませんでした

(B)はその一部について、液滴量の時間変化などがグラフ化されたものです。

検証されていない点・分からない点

この実験では、液滴数だけをカウントしているので、検証されていない部分はいくつかあります。

この研究では、マスク性能を評価する方法の1つとして、液滴数をカウントする方法をとりました。

ネックゲイターが感染防止に効果があるかという観点で見ると下記の点が気になります。

検証されていない点の代表例
  • ネックゲイターの素材や作りがどう影響するか
  • 液滴中のウイルス活性とその持続時間

1つ目の点は別の記事で、言及されていました。

今回使用されたのはスパンデックスとポリエステルを使用した薄いタイプのものでした。

ネックゲイターの中には、より厚く高品質なものがあり、再試験をして欲しいという要望も出ているようです。

https://www.newsobserver.com/news/business/article244880507.html

2つ目の点については、「マスクなしの方がいいのでは」という内容もみられます。

これは、ネックゲイターでは液滴粒子が細かくなっている様子が観察されおり、小さい粒子径の方が空気中での滞留時間が長いことから来ています。

(参考)

新型コロナウイルス情報 | 室内環境学会
室内環境研究会は1998年1月より「室内環境学会」と名称を変更してさらなる発展を目指し、さまざまな角度から室内環境の問題の解決に取り組んでいます。

いずれにしても現段階では検証がされていないので、効果のほどは分かりません。

現段階での理解 (2020年8月12日現在)

以上の内容を踏まえると、現段階ではわたしは下記のように考えています。

現段階での理解
  • Buffを含むネックゲイターの感染防止効果に科学的根拠はない
  • 少なくとも薄手のものに飛沫拡散を抑える効果はなさそう
  • 十分な距離が確保できる環境を作ることが大事

ここまで紹介した内容に加えて、発端となった研究が査読前の状態で論文となっていました。

http://www.urbanphysics.net/COVID19_Aero_Paper.pdf

彼らの推奨としては下記の通りです。

  • スリップストリームに入らない(ランナーの真後ろ)
  • 真横か斜め後方で1.5m以上の距離をとる
  • 上記以外ならとにかく十分な距離をとる

これを参考にするならば、仲間内で走る場合でもとれる策はありそうですね。

自分はぼっちですが。。。泣

また現段階では、厚生労働省と米CDCは下記のような対応を推奨しています。

厚生労働省の推奨
  • 屋外で1.8-2m以上の距離が保てる場合は、マスクを外す (高温多湿の場合)
お探しのページが見つかりません(404 Not Found) 。
米CDCの推奨
  • 屋内で十分な距離(1.8m以上)を保てない場合に、マスクを着用を推奨
  • ランニング等の強度が高く、マスク着用が難しい運動は屋外で
Page Not Found | CDC
Page Not Found | CDC

これらを総合的に捉えて、柔軟な対応をしていくのが良さそうですね!

おわりに:気持ち良く走れる環境作りを!

科学的に検証が済むには、まだ時間がかかりそうです。情報を追いかけつつ、気持ちよく走れる環境づくりをしていくことが大切だと思います!

科学的な検証についてはまだ十分ではありません。

国もこれらを参考に、リスクとベネフィットのバランスをとって対策を発表しているはずです。

この環境で気持ちよくランニングライフを送るにはどうしたら良いか?

簡単な問題ではないですよね。。。

こんな時まで走るなよ!という方もいる訳で。。。

人は理論ではなく、感情の生き物と言われます。

正論だけ伝えても納得してもらえないし、感情をぶつけると上手くいきません。

まずは、相手の立場も考えて自分の行動・発言を見直すところからやっていこうかと思っています。

良き方向に世の中が進みますように。。。

それでは良いランニングライフを!

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